Untitled Trueman's Digital Archive

~Gallery of Hindsight 2020~

「カフカ」的経験

1994年のことですが、ひょんなことで、ロサンゼルスとサンディエゴの間あたりの街のウエスティン・ホテルに長逗留することがありました。

アメリカの西海岸に行ったのは初めてだったのですが、あのあたりって、畑と砂漠とハイウェイしかなく、どこに行くにも車を運転していかないとならないところで、歩いて行けるところでめぼしい場所といえば、ホテルの隣にある大きなショッピングモールと、ジョギングで近所のだだっ広い畑の周りを走るぐらい。夕方になるとホテルのロビーでお酒を飲む他にすることがなく、暇つぶしに、ハイウェイの反対側にあった「八百半」の本屋で買った文庫本がフランツ・カフカの「城」でした。

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Leica M + Summilux 50mm ASPH

確か、主人公の役人が辞令を受けて「城」と呼ばれる官庁がある街にやってきたのだけど、なぜか「城」に入れてもらえなくて、ひとまず近所の宿屋に投宿し、「城」に入るために奔走するが・・・というようなお話だったと思います。ずいぶん長くて、暗くかつ退屈な描写が続く小説だったように思うのですが、私の日常もそれ以上に退屈だったので、最後まで読み切ったことを記憶しています。

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この小説に基づいてテリー・ギリアムの映画「未来世紀ブラジル」が作られたという話を当時聞いたように記憶しています。「未来世紀ブラジル」は学生の頃に何かの拍子でひとりでふらっと入った高田馬場あたりの映画館で観て、当時とても影響を受けた大好きな映画なのですが、なぜだかいつもデビッド・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」(食べるフライじゃなくて、「蠅」の「フライ」ね)との2本だてで上映されてました。

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同じ頃にウッディ・アレンの「Anny Hall」のビデオを買って、数ヶ月間の間に、多分20回は観たと思います。あの頃、なぜそんなにあの映画に惹かれたのか、理由は定かではないのですが、ちょっと精神的に参っていたのかもしれませんね。

その「Anny Hall」の中で、主人公のアルビーのガールフレンドがベッドで「Sex with you is really a Kafka-esque experience」とコメントするシーンがあります。・・・「カフカ的な経験」って、いったいどういうことなんでしょうね。「わたし、褒めてるのよ」って続くんだけど、余計に謎です。

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と、いうような極めて断片的なことを、この街を歩いていて、細切れに思い出しました。