カドモス神の託宣
「文明をもたらす神カドモスが、竜の歯を播いたのだった。怪物の息で皮を剥がれ焼かれた土地に、人間が生えて来るのを見られるのを、人は待ち望んでいたのである。」(レヴィ=ストロース「悲しき熱帯」より)
主人を失った家。夏を前に、つつじが鮮やかである。
構図を考え直したり、雑なものを外そうとして、フレーミングしなおした写真よりも、最初にさっと、撮ったカットの方が、よいような気がするのは何故だろう。
東京人たちのビルディングに囲まれて、そこだけぽかりと祈りの場所がある。いつまでこの空間が維持されるのだろう。人間たちが歴史を紡いできたのだし、これからも歴史を書きつないでいくのだ、という一つの野蛮な信仰から僕達が解放されることがないとしたら、それほどながいことではないだろう。
「・・・世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。」(レヴィ=ストロース)