Untitled Trueman's Digital Archive

~Gallery of Hindsight 2020~

2021-01-01から1年間の記事一覧

Leica M Type240: 晩秋、そして「1973年のピンボール」

上京して大学生として一人暮らしを始めたのは、都内でも有数の広大な墓地のそばにあった民家の二階の六畳間だった。下の階に五歳くらいの小さな女の子のいる夫婦が住んでいて、窓を開けると、見渡す限り墓地が広がっていた。時折夜中に金縛りにあったりする…

昭和歌謡とオリンパス E-3

体の傷なら 治せるけれど こころの痛手は 癒せや しない Olympus E-3 + Zuiko Digital 12-60mm 沢田研二「時の過ぎゆくままに」(1975年;昭和50年)からの一節ですけど、これ、今でも通用するのかな。今なら「体の傷なら医者にいけ(良い医者にね)、心の痛…

Slow Sunday, Lazy Sunday.

Leica M + Summilux 50mm ASPH + RAW developed by LR 今日はデジタルカメラを取っ替え引っ替え、うちの猫を撮った。結論として、結局ライカ(フルサイズ)が一番それっぽい写真が撮れるのであった。以上まる。 Olympus E-1 + Zuiko Digital 12-60mm + RAW d…

ライカと地動説、そして杉並慕情

昨日は下井草駅から吉祥寺駅まで、歩きました。 もう冬ですね。天気予報は晴れで家を出た時には暖かかったのですが、下井草駅を降りたら空は曇りがちで、風が冷たい。海から遠く離れているからかな。 海って意外とあったかいんですよね。地面が意外と冷たい…

Fujifilm X-T4: 40年遅れの夏休みの読書感想文

喪失感。何かが決定的に、取り返しようもなく失われたという、不安な感覚。この一遍の小説を読み始めて読み終わるまでの二日ほどの間に、僕は何を得て、何を失ったのだろう。 Fujifilm X-T4 + XF Zoom 16-80mmF4.0 夏目漱石の「三四郎」。今から100年も前…

Fujifilm X-T4と「三四郎」

「『どこか静かな所はないでしょうか』と女が聞いた。 谷中と千駄木が谷で出会うと、いちばん低い所に小川が流れている。この小川を沿うて、町を左へ切れるとすぐ野に出る。川はまっすぐに北へ通っている。三四郎は東京へ来てから何べんもこの小川の向こう側…

Summer Cheer

Fujifilm X-E2 + XF35mmF1.4 夏のいいところはビールがいつにも増して美味しいところですが、デジタルカメラのいいところって、撮ってすぐに結果を見ることができるっていうことですよね。 Leica M + Summilux 50mm フルサイズだからなのか、ライカだからな…

堀田善衛を読む。

太初にロゴスありき@板橋区 「しかしその代償は高くついた。カルロスはスペインの銀鉱山、水銀鉱山の採掘権だけではなく、貨幣鋳造権までをフッガー家に手渡してしまったのである。すなわち、スペインは国外に向けての植民地世界帝国を形成すると同時に、そ…

「カフカ」的経験

1994年のことですが、ひょんなことで、ロサンゼルスとサンディエゴの間あたりの街のウエスティン・ホテルに長逗留することがありました。 アメリカの西海岸に行ったのは初めてだったのですが、あのあたりって、畑と砂漠とハイウェイしかなく、どこに行くにも…

だから、「坊っちゃん」

私はそれほど多くの本を読んだわけでもないが、それでもしかし、日本文学の中で最も素晴らしい作品を一つ挙げるとすれば、それは夏目漱石の「坊っちゃん」であろう。何故この作品が私の心を捉えて離さないのかその理由を考えてみるに、集中して読めば3〜4…

カドモス神の託宣

「文明をもたらす神カドモスが、竜の歯を播いたのだった。怪物の息で皮を剥がれ焼かれた土地に、人間が生えて来るのを見られるのを、人は待ち望んでいたのである。」(レヴィ=ストロース「悲しき熱帯」より) Leica M + Summilux 50mm ASPH + Jpeg 主人を失っ…

Every time we say goodbye I die a little

みんながさよならというとき 私は少しだけ死ぬ みんながさよならというとき 少しだけ どうしてなのって 私は思う どうして 何もかもご存知のはずの神様が 私のことは少しも考えてくださらなくて こうしてあなたが逝ってしまうのを 許されるのか (Cole Porte…

Love for Sale

月島 2020 当たり前かもしれないけど、写真って何で撮るか、じゃなくて、何を撮るか、なのよね。だから私、決めたの。手持ちのカメラを使うことにもっと集中しようって。これって今風にいうと、「全集中〜!」てこと(笑)? チェット・ベイカーって、60年代…

探検するということ

Olympus E-1 + Zuko Digital 12-60mm 「探検するということは、広く歩き回ってものを見ることであるよりは、むしろ一つの地点を発掘することである。迂闊に見逃してしまいがちな一つの光景や、ほんの小さな景色、飛行中に考えたことーこうしたものだけが、さ…

おいしいというときはおいしいといおう

Olympus E-1 + Zuiko Digital 12 - 60mm + RAW developed by LR 気になる。大変気になっている。それは、ビールのCMでなぜ、俳優たちに「美味しい!」と言わせるのか、ということである。「美味しい」という言葉を使わずに「美味しい」ことを伝えられるのが…

ゾシマ長老の教えに教えられる

Fujifilm X-T4 + XF16-80mmF4.0 + Provia Mode 「いや、ディドロのことではありません。大事なのは、自分に嘘をつかないことです・・・」 「自分に嘘をつくものは、他の誰よりも腹を立てやすい、何しろ、腹を立てるというのは、時としてたいそう愉快なもので…

「ライカで撮る理由」4

ゴミ取り機能がないのがデジタルM型ライカの最大の弱点・・・と認識はしていたけど、これほど早く問題が露呈するとは。。我が家には猫がいるので、室内は常に細かい埃が舞い飛んでいる環境、自宅ですらレンズ交換はご法度。ということで、家に持ち帰ってズミ…

「ライカで撮る理由」3

まだ散り残っている紅葉を撮ってみました。当然のことながらマニュアルフォーカスなのですが、しっかりとシャープに撮れています。フジフィルムのXマウント用アダプターは純正品とサードパーティ製のものと二種類試してみたこともあったのですが、なんだかパ…

「ライカで撮る理由」2

さて、数時間後。 結局私が購入に及んだのは、ライカ直営店にて取扱いのライカ認定中古のM Type240のブラックペイントモデルとなりました。中古のライカではこれまでも「完璧」という物件はやはりなく、どこか気になる点があるというのが正直なところです。…